墓標

オタク思想とオタク地獄とラブコメと萌え4コマ漫画

基数演算の話 その1

おはようございます。

 

AWT48という概念が心臓を破壊していきましたが私は元気です。

 

もちろんこの記事は刀剣乱舞に関する話ではないです。

 

 さておき。

 

今自分は基数のべきについての話を書いているのですが、その1で

 

「無限基数の和と積は{\kappa+\lambda=\kappa\cdot\lambda=max\{\kappa,\lambda\}}でめっちゃ簡単!」

 

と書きました。

 

確かにべきの値が全く分からないことに比べれば簡単なのですが、演算の性質についてはそうでもないです。

 

ざっくり言うとこれは無限に関する計算を考えているので冒頭に挙げたようなことが普通に起こるのですが、それを確認するのはそんなに簡単でもないです。

 

なので和と積の定義をして諸々の性質を考えていきたいと思います。

 

注意なのですが、この話は全てZFC上の話です。

 

また、ここでは{\kappa,\lambda,\mu}や、これに添え字付けたものはすべて基数を表すことにします。

 

基数の定義とかは、

 

mgtohakari.hatenablog.com

 

に書いてあります。

 

定義

{\kappa+\lambda:=|\kappa\times\{ 0\}\cup\lambda\times\{ 1\}|}

{\kappa\cdot\lambda:=|\kappa\times\lambda|}

 

基数の和は直和の濃度、積は直積の濃度として定義されます。また、有限の場合を考えればちょうど拡張になっていることがわかります。

 

例)

{2+3=|2\times\{ 0\}\cup 3 \times\{1\}|=|\{\langle 0,0\rangle,\langle 1,0\rangle,\langle 0,1\rangle,\langle 1,1\rangle,\langle 2,1\rangle\}|=5}

 

無限項の演算についても、

{\sum_{i\in I}\kappa_{i}=|\bigcup_{i\in I}(\kappa_{i}\cup\{ i \})|}

{\prod_{i\in I}\kappa_{i}=|\prod_{i\in I}\kappa_{i}|}

として定義されます。{I}は添え字集合です。なんか定義が循環して見えるので注意を書くと右側の{\prod}は直積の意味です。記号の意味としては別物です。

 

和や積の演算について調べるには直積や直和の濃度を調べれば良いことがわかります。

 

これを考えるのに濃度の話を思い出します。

 

濃度の定義より、2つの集合の濃度が等しいとはそれらの間に全単射が存在することを言います。

 

2つの集合間に全単射が存在することを2つの集合は対等であると表現し、{A,B}が対等であることを{A\sim B}で書きます。

 

 選択公理があるので任意の集合{A,B}は整列可能です。

 

そして整列集合は順序数との間に全単射(順序同型写像)を持つので{A,B}は濃度を持ちます。

 

{|A|,|B|}は順序数なのでどちらか一方への順序構造の埋め込み写像が存在します。これは単射になるので{|A|\leq|B|}あるいは{|B|\leq|A|}ということになります。

 

で、両方言える時、すなわち{|B|\leq|A|}かつ{|A|\leq|B|}なるときBernsteinの定理より{|A|=|B|}が言えます。

 

また、{|B|\lt|A|}なるとき等号が言えないので全単射は存在しません。よって任意の単射{f:B\to A}全射でないです。もっと言うと全射が存在しません。

 

逆に、全射{f:B\to A}が存在しないなら{|B|\lt |A|}が言えます。

 

で、何が言いたかったかというと基数の演算はある集合の濃度で定義されていたので、基数の演算を調べるには「いい感じの写像を作る」というのが常套手段になります。

 

なので写像を使っていくつかの例を示していきます。

 

定理1

1){\kappa+\lambda=\lambda+\kappa}

2){\kappa+(\lambda+\mu)=(\kappa+\lambda)+\mu}

3){\kappa\cdot\lambda=\lambda\cdot\kappa}

4){\kappa\cdot(\lambda\cdot\mu)=(\kappa\cdot\lambda)\cdot\mu}

5){\kappa\cdot(\lambda+\mu)=\kappa\cdot\lambda+\kappa\cdot\mu}

6){\kappa+0=\kappa}

7){\kappa\cdot 1=\kappa}

が成立する。つまり基数の和と積はそれぞれ結合律と可換律、分配律を満足しそれぞれ単位元が存在する。

証明

 1) {f:\kappa\times\{0\}\cup\lambda\times\{1\}\to\lambda\times\{0\}\cup\kappa\times\{1\}}

{\langle\alpha,0\rangle\mapsto\langle\alpha,1\rangle}

{\langle\alpha,1\rangle\mapsto\langle\alpha,0\rangle}

として定義する。これは明らかに全単射だから{\kappa+\lambda=\lambda+\kappa}である。

2)~4)もほぼ同じ。5)は集合演算の分配律を考えればよいです。6)は{\emptyset\times\{1\}=\emptyset}であるから良い。7)も1元集合との直積は元の集合と明らかに対等なので良いです。□

 

また、次が言えます。

定理2

1){\kappa\leq\lambda}なら{\kappa\cdot\mu\leq\lambda\cdot\mu}

2){\kappa,\lambda\lt 0}なら{\kappa+\lambda\leq\kappa\cdot\lambda}

証明

1){f:\kappa\to\lambda}単射として{\mu}上の恒等写像との積で得られる写像は明らかに単射

2){\kappa=1}の時はあきらかなのでそうでないとする。

 

{f:\kappa\times\{0\}\cup\lambda\times\{1\}\to\kappa\times\lambda}{f(\alpha,0)=\langle 0,\alpha\rangle,f(\alpha,1)=\langle 1,\alpha\rangle}とすればこれまた明らかに単射である。□

 

わりと「それはそう」感が強いのでそれほど自明でない例を考えます:

 

定理3

任意の無限基数{\kappa}に対し{\kappa\cdot\kappa=\kappa}が成立する。

証明

次の主張から直接得られます:

 

主張

任意の無限順序数{\kappa}に対し{\kappa\times\kappa\sim\kappa}が成立する。

主張の証明

{\kappa=\omega}であるときは{\mathbb{N}\to\mathbb{N}\times\mathbb{N}}なる全単射が存在することは良く知られているので{\kappa\gt\omega}なケースを考えます。

 

{\kappa\times\kappa\sim\kappa}でない」無限順序数{\kappa}が存在したとします。

 

「」内の性質を(*)と置いておきます。

 

{\alpha}をそのような順序数で最小のものとする。

 

{\alpha\to\alpha\times\alpha}なる単射の存在は明らかで仮定より全単射が存在しないから{|\alpha|\lt|\alpha\times\alpha|}

 

このとき{\alpha}は基数となる。もしそうでないとすると{\beta\lt\alpha\land\beta\sim\alpha}なる順序数{\beta}が存在する。

 

{\alpha}は(*)を満足する最小の順序数であるから{\beta\times\beta\sim\beta}である。

 

しかし、{\alpha\times\alpha\sim\beta\times\beta\sim\beta\sim\alpha}であり矛盾。

 

よって、{\alpha}は基数である。

 

次に{\langle\gamma,\in\rangle\simeq\langle\alpha\times\alpha,\lt_{L}\rangle}なる順序数{\gamma}を考えます。ここに,{\lt_{L}}は2つの{\langle\alpha,\in\rangle}から出来る辞書式順序。

 

事実として認めてしまうのですが、この{\gamma}は一意に存在します。(ここでは話しませんが、順序数の演算というのも定義されていてこの{\gamma}が一意に存在することから順序数の積を定義したりします。)

 

また、この{\gamma}について、{|\alpha|\lt|\alpha\times\alpha|=|\gamma|}より{\alpha\lt\gamma}

 

これより、{\alpha}{\gamma}の始切片なので{\alpha\times\alpha}の始切片と同型になる。すなわち次を満足する{\langle\xi,\eta\rangle\in\alpha\times\alpha}が存在する:

 

{\langle\alpha,\in\rangle\simeq\langle\{\langle\xi',\eta'\rangle\mid\langle\xi',\eta'\rangle\lt_{L}\langle\xi,\eta\rangle\},\lt_{L}\rangle} ...(1)

 

ここで,{\delta=\xi\cup\eta +1}なる順序数を考えます。この{+1}は順序数の後続を取るという意味で基数の演算ではないです。

 

順序数は小さい方が大きい方の始切片となるから{\xi\cup\eta}{\xi\lt\alpha}あるいは{\eta\lt\alpha}となる。また{\alpha}は無限基数でありすなわち極限順序数。

 

極限順序数は後続を取る操作で閉じているから{\delta=\xi\cup\eta+1\lt\alpha}であり、かつ{\langle\{\langle\xi',\eta'\rangle\mid\langle\xi',\eta'\rangle\lt_{L}\langle\xi,\eta\rangle\}\subseteq\delta\times\delta}

 

(1)より、{\alpha\to\delta\times\delta}なる埋め込みが存在するが、{\alpha}の最小性より{\delta\times\delta\sim\delta}

 

これより、{f:\alpha\to\delta}なる単射が存在する。

 

また、{\delta\lt\alpha}より{g:\delta\to\alpha}なる単射も存在してBernsteinの定理より{\delta\sim\alpha}

 

しかし、{\alpha}は基数であるから自分より小さい順序数との全単射は存在しないはずだから矛盾。

 

これより、(*)を満足する無限順序数は存在しない□

 

よって主張が示せた。

 

これより、任意の無限基数{\kappa}に対し{\kappa\times\kappa\sim\kappa}だから{\kappa\cdot\kappa=\kappa}である。□

 

 系4

無限基数{\kappa,\lambda}に対し {\kappa+\lambda=\kappa\cdot\lambda=max\{\kappa,\lambda\}}

証明

{\kappa\leq\lambda}としても一般性を失わない。

 

定理2,3より{\lambda\leq\kappa+\lambda\leq\kappa\cdot\lambda\leq\lambda\cdot\lambda=\lambda}

 

よって{\kappa+\lambda=\kappa\cdot\lambda=\lambda=max\{\kappa,\lambda\}}が得られた。□

 

これらより、有限項の無限基数の和、積のみからなる演算は計算すると現れる項のなかで最大の無限基数になることがわかります。

 

べきはとても難しい(とても難しい)のでここでは考えなくて、とりあえず次回があれば無限項の演算を考えたいと思います。

きらら12月号を買ってきた話

基数の話時間かかってて大変です。時間がないです。需要があるかはわかりませんが特異基数の話題を広めたいので頑張って書きます。

 

何も書かないのもアレだし別に数学のブログと決めたわけでもないので、きらら12月号の感想でも書こうと思いました。が、

 

「発売日にネタバレ相当のことを書くのってどうなんだ」

 

と思ったのでやめました。

 

なのでネタバレにならない範疇の話と好きな作品の話をします。

 

自分は半年ほど前からきらら購読を再開しまして、久々に読んだ中でおしおしお先生の「神様とクインテット」という作品がめちゃんこ気に入りました。

 

12月号は最終回で自分が読んでいたのは短い間でしたが、最終回がリアル時間で読めてよかったなと思います。

 

1巻面白かったです。なんというか汁汁汁というか、アグレッシブなお話で元気をもらえました。

 

最終回も自分が「これ好き!」と思ったノリ全開だったのでとてもよかったです。めっちゃありがとうございました。

 

2巻は12/27発売らしいです。買います。

 

色々書きたいけど自分はネタバレ被害の経験があるのでここにはこんなふわふわした感想しか書きません。

 

 

 

最後に余談なんですけど、

 

自分はtwitter上で呟いているように実際きららを拝んだりしていますが、

 

"三者三様で小田切双葉ちゃんが「崇め奉れい!」と言った"という事実は一切関係ないです。自分は数年前からこんなオタクです。

基数のべきを調べたいという話 その2

続きです。

 

特異基数のべきを調べるにはどうしたらいいんだ!って話でした。

 

これを知るために次の言葉を定義します。

 

定義(gimel関数)

{ICN}上の関数{\kappa^{cf(\kappa)}}をgimel関数という。

 

ちなみにgimelというのはヘブライ文字の3番目の{\gimel}です。

 

これに関して次の定理が知られています。

 

定理

任意の無限基数{\kappa}に対し次が成立する:

{ 2^{\kappa}=\begin{cases}\kappa^{cf(\kappa)} & \kappa\text{ is regular.}\\ 2^{\lambda_{0}} & \kappa \text{ is singular and }\exists \lambda_{0}\lt\kappa\forall \lambda\lt\kappa(\lambda\lt\lambda_{0}\to 2^{\lambda_{0}}=2^{\lambda})\text{ holds.} \\(2^{\lt\kappa})^{cf(2^{\lt\kappa})} & \text{otherwise.} \end{cases}}

 

2行目のケースは{\lambda_{0}}を正則基数として取ることができるので正則基数のgimel関数です。

 

なのでgimel関数の値が全部わかればべきの値は全部計算できます。

 

正則基数のgimel関数とべきは同じなのでEastonの定理より正則基数上のgimelについては証明できることは殆どない。

 

なので調べるべきは特異基数のgimel関数ということになります。

 

ではgimel関数の値を調べるにはどうしたらいいんだという話になります。

 

定理

{ \kappa^{\lambda}=|[\kappa]^{\lambda}|}

ここに、{[\kappa]^{\lambda}=\{x\subseteq\kappa\mid |x|=\lambda\}}

 

で、{[\kappa]^{\lambda}}{\subseteq}で順序が入るのでこれの濃度を知るためには次がわかれば良いです。

 

定義({\subseteq}のcofinality)

{cf([\kappa]^{\lambda},\subseteq)=min\{|x|\mid x \subseteq [\kappa]^{\lambda} \text{ is unbounded in } \langle[\kappa]^{\lambda},\subseteq\rangle\}}

 

これについて次が成立する。

 

定理

無限基数{\kappa}と正則基数{\lambda}に対して

{|[\kappa]^{\lambda}|=cf([\kappa]^{\lambda},\subseteq)+2^{\lambda}}

 

証明

{X\subseteq [\kappa]^{\lambda}}をunboundedな部分集合で{|X|=cf([\kappa]^{\lambda},\subseteq)}とする。

すなわち、{\forall x\in[\kappa]^{\lambda}\exists y \in X.x\subseteq y}が成立する。

よって、{x\in[\kappa]^{\lambda}}を任意に取ると{x\in [y]^{\lambda}}なる{ y \in X}が存在する。

ので、

{[\kappa]^{\lambda}=\bigcup_{y \in X}[y]^{\lambda}}

なので{|[\kappa]^{\lambda}|}{|[y]^{\lambda}|=|y|^{\lambda}=\lambda^{cf(\lambda)}=2^{\lambda}}を|X|個くっつけた値です。

よって{|[\kappa]^{\lambda}|=cf([\kappa]^{\lambda},\subseteq)\cdot 2^{\lambda}=cf([\kappa]^{\lambda},\subseteq)+2^{\lambda}}

 

任意の無限基数{\kappa}に対して、

{\kappa^{cf(\kappa)}=cf([\kappa]^{cf(\kappa)},\subseteq)+2^{cf(\kappa)}}

 

「これより{cf([\kappa]^{cf(\kappa)},\subseteq)}がわかればgimel関数が計算できます。」

(訂正){2^{cf(\kappa)}}は正則基数のべきなので{cf([\kappa]^{cf(\kappa)},\subseteq)}について調べればよい。

 

しかし{\subseteq}は清楚だとか良い性質を全く持っていないのでこの値はよくわかりません。

 

しかしこれの値に上限が存在するという結果が知られていて具体的に言うと次です:

 

定理(Shelah)

{cf([\aleph_{\omega}]^{\aleph_{0}},\subseteq)\lt\aleph_{\omega_{4}}}

 

次回はどうやって{cf([\kappa]^{cf(\kappa)},\subseteq)}を調べるのかという話をしたいです。

 

つづく 

 

参考文献は次です。

U.Abraham and M.Magidor,"Cardinal Arithmetic",Handbook of Set Theory Volume2(1149-1228),Springer,2010

M.Holz and K.Steffen,E.Weitz,"Introduction to Cardinal Arithmetic",Modern Birkhaeuser Classics,Birkhause Basel,1999

順序数と基数の話

定義が色々あるから明記すべきという意見を頂いたのでまとめて順序数と基数についてまとめて書きます。

 

これは全部ZFC上での定義です。

 

定義(順序数)

{ \forall x ,y \in \alpha(x \in y \lor x = y \lor y \in x)}かつ{ \forall x ,y (x \in y \in \alpha \to x\in\alpha})を満足する集合{ \alpha}を順序数という.

 

1つ目の条件をconnective、2つ目の条件をtransitiveという。

 

 {0=\emptyset,1=\{0\},2=\{0,1\},...,n,n+1=n\cup\{n\},...}は順序数である。これらを有限順序数、あるいは自然数という。

自然数全体の集合 {\omega=\{0,1,2,...\}}は順序数である。

{\omega+1=\omega\cup\{\omega\},\omega+2,\omega+3,...\\ \omega+\omega,\omega+\omega+\omega,...\omega\cdot\omega,\omega\cdot\omega\cdot\omega,...\omega^{\omega},\omega^{\omega^{\omega}},...,\omega_{1},...}

はすべて順序数 。

 

という感じにたくさん得られる。{\omega}より大きい順序数を無限順序数、{\alpha+1}で書ける順序数を後者順序数、そうでないものを極限順序数という。

 

これは整列集合の順序形を表現する。

 

定理

任意の整列集合{\langle A,S \rangle}に対しある順序数{\alpha}が一意に存在して{\langle A,S\rangle\simeq\langle \alpha,\in \rangle}が成立する。

 

ここでいう{\simeq}は順序同型ということ。

 

また、順序数全体の固有クラスを{ON}と書く。

 

固有クラスと書いたのは集合にならないから。{ON}自身は順序数の定義(connectiveとtransitive)を満たすので集合とすると{ON\in ON}になって矛盾。

 

で、{ON}でも似たようなことが成立する。

 

定理

set-likeな整列構造を持つ固有クラス{\langle C,R\rangle}に対し{\langle C,R\rangle\simeq\langle ON,\in \rangle}が成立する。

 

 set-likeは任意の{y \in C}に対して{\{x \in C |x R y\}}が集合という条件。

(追記 2016/10/26)set-likeであるという条件を忘れていたので付け足しました。ご指摘ありがとうございます。

 

{\simeq}についてはまた順序同型の意。クラスだけど同じ風に考える。

 

で、これを見てもそうなのだけど{ON}{\in}で一列に整列しているのでこれより順序数の中に不等号を与える。

 

順序数の大小関係は{\alpha\lt\beta \leftrightarrow\alpha \in \beta}で定義される。

 

{\alpha\leq\beta}{\alpha\lt\beta\lor \alpha=\beta}とすると{\langle \alpha,\leq\rangle}は整列集合。ここでざっくりとした順序数の説明が出来て要は「{\in}に関して整列構造をなす集合」って感じ。

 

で、順序数で大事なものは超限帰納法

 

定理(超限帰納法)

{(\varphi(0) \land \forall \alpha(\forall \beta \lt \alpha\varphi(\beta)\to \varphi(\alpha))\to\forall \alpha\varphi(\alpha)}

ここに、{\varphi}集合論言語の論理式

 

数学的帰納法自然数上だけだけどこっちは順序数上の帰納法

 

これのおかげでめっちゃたくさんのことが示せる。

 

順序数はこんな感じ。

 

次は基数を定義したい。

 

その前に濃度を定義する。

 

定義(濃度)

集合{A}の濃度とは{A}との間に全単射を持つ順序数で最小のものをいい、{|A|}で表現する。

 

最小のものが常に取れるというのは順序数が整列してるから。

 

この定義だと常に集合に濃度が入るかどうかがわからない。

 

けど選択公理があると任意の集合は整列するから定理よりある順序数が存在して全単射(順序同型写像)が取れる。ので常に濃度は存在する。

 

けど選択公理がないと整列不可能集合があるからこれの濃度がわからんという話があるけど今は選択公理があるので気にしない。

 

で、基数の定義が出来る。

 

定義(基数)

順序数{\alpha}が基数であるとは濃度がそれ自身と一致する、すなわち{|\alpha|=\alpha}なることを言う。

 

有限順序数はすべて基数

{\omega}は基数だが{\omega+1}は基数でない。

 

言い換えると自分より小さい順序数との間に全単射を持たない順序数が基数。

 

上の例だと{\omega}より小さい順序数は有限だから明らかに全単射を持たない。けど{\omega+1}{\omega}との間に全単射が存在するから基数ではない。

 

基数全体の固有クラスを{CN}で書く。有限順序数は全部基数で有限基数を除いた無限基数全体の固有クラスを{ICN}と書く。

 

さっきの定理から{\langle ICN,\in\rangle}{\langle ON,\in\rangle}の間に順序同型写像が存在する。

 

これを{\aleph:ON \to ICN}で書く。この対応で得られる{\aleph_{\alpha}}アレフ数という。

 

{\aleph_{\alpha}}は順序数でもあるからこれを順序数として使うとき{\omega_{\alpha}}で書く。

 

無限基数は3種類に分類できる。

 

定義

{\aleph_{\alpha+1}}の形をする基数を後者基数という。

 

これは{\aleph_{\alpha}}の直後にある基数。また、{\kappa}の直後にある後者基数を{\kappa^{+}}で表現する。

 

定義

{\delta}が極限順序数の時{\aleph_{\delta}}を極限基数という。

 

{\aleph_{\omega}}は極限基数。

 

定義(共終数)

順序数{\kappa}に対して{cf(\kappa)=min\{|x|\mid x \text{ is unbounded in }\langle\kappa,\in\rangle\}}{\kappa}の共終数(cofinality)という。

 

 これが何かというと{\kappa}{\in}に関して順序構造を持っているからこれに関して非有界部分集合を考えることができる。それの最小濃度が共終数。

 

極限順序数{\kappa}の非有界部分集合の上限を取ると{\kappa}と一致するから非有界部分集合は{\kappa}に収束する順序数の列。

 

なので{cf(\kappa)}{\kappa}に収束する列の長さで最小のものを表す。

 

{\alpha+1=\alpha\cup\{\alpha\}}の共終数は1

 

後者順序数は最大元があるから共終数は1。

 

{cf(\aleph_{0})=\aleph_{0}}

{cf(\aleph_{\alpha+1})=\aleph_{\alpha+1}}

{cf(\aleph_{\omega})=\aleph_{0}}

 

{cf(\aleph_{\omega})}については{\{\aleph_{n}\mid n \in \omega\}}が非有界部分集合になるから。

 

気持ちとしては{\aleph_{\omega}=lim_{n\to \omega}\aleph_{n}}という感じ。

 

こういう基数は自分より小さい基数が小さい個あったときそれらから表現することができる。

 

けど{\aleph_{0}}より小さい基数は全部有限だから同じことは言えない。

 

なので{\aleph_{\omega}}は少し変わった性質を持つ。

 

定義

{cf(\kappa)=\kappa}なる無限基数{\kappa}を正則基数、そうでないものを特異基数という。

 

{\aleph_{0}}は正則基数

後者基数はすべて正則基数

極限順序数{\kappa}に対し{cf(\kappa)}はすべて正則基数

{\aleph_{\omega}}は特異基数

 

なので無限基数は次のように分類される。

 

{\text{無限基数}\begin{cases}\text{後続基数}\\ \text{極限基数}\begin{cases} \text{正則基数}\\ \text{特異基数}\end{cases}\end{cases}}

 

参考文献

田中尚夫,"公理的集合論",現代数学レクチャーズB-10,培風館,1982

基数のべきを調べたいという話 その1

せっかくtexを使えることが判明したので数学の話を書きます。

 

めっちゃ長くなっちゃったので分割して投稿しよう。

 

(追記)ZFCの無矛盾性は仮定します

 

(追記2,2016/10/26)各定義をまとめました

順序数と基数の話 - 尊みで飯が食える

 

特異基数問題と呼ばれるものの話がしたいです。

 

特異基数問題について話すためにまずはCardinal Arithmeticの話をします。

 

Cardinal Arithmeticはその名の通り基数の演算について調べる分野です。

 

基数ってなんじゃらぽんというと集合の濃度を表す数です。{ \aleph_{0}}とか{\aleph_{1}}とかのアレです。

 

ちゃんと言うと濃度が自身と一致する順序数を基数と言います。表記として{\alpha}番目の無限基数が{\aleph_{\alpha}}です。

 

で、無限基数の演算を考えることができます。有限基数の場合は普通の足し算掛け算と同じです。

 

無限基数の演算には和、積、べきがありますが和と積はめっちゃ簡単。

 

なんでかというと{\kappa+\lambda=\kappa\cdot\lambda=max\{\kappa,\lambda\}}だからです。わかりやすい!

 

なのでべきを調べるのが主な目的です。これはめっちゃ難しい。

 

最初に基数 { \kappa }のべき{ 2^{\kappa} }ってなんじゃらぽんというとべき集合 { \cal{P}(\kappa) }の濃度です。

 

もっと一般に {\lambda^{\kappa}} {\{f|f:\kappa\to\lambda\}}の濃度として定義されます。

 

{ 2 }は2元集合なので {\{f|f:\kappa\to 2\}}は特性関数全体と対等でこの定義はべき集合の濃度で定義するやつの一般化です。

 

なんでこれが難しいかというと、めっちゃ知られている事実として連続体仮説{ 2^{\aleph_{0}}=\aleph_{1} }はZFC上独立です。 

 

もっと言うと{ 2^{\aleph_{0}}=\aleph_{1}}と仮定しようが{2^{\aleph_{0}}=\aleph_{2016}}と仮定しようがZFCとは矛盾しません。

 

かなーり好きに仮定してよいのです。

 

私は三者三葉が大好きなので語呂合わせて34834番目の無限基数を連続体濃度に、つまり{2^{\aleph_{0}}=\aleph_{34834}}を仮定しても無事数学は展開できます。実数が三者三葉個あって幸せですね。ちなみに{2^{\aleph_{0}}}は実数全体の集合{\mathbb{R}}の濃度なので連続体濃度と言います。 

 

実数の濃度がヘンテコなことになってて困る!つらい!連続体仮説最高!ということは自分は全然聞いたことないけど積分の話でちょっと変なことが起きることがあるとかどっかで聞いたかも。

 

それなら私は{\omega}が好きだ!というあなたは残念ながら{2^{\aleph_{0}}=\aleph_{\omega}}を仮定することができません。{ 2^{\aleph_{0}}\not=\aleph_{\omega}}がZFCから証明できるので矛盾してしまうのです(K\"onigの定理)。

 

こんな感じにダメなパターンも当然のようにありまして、ダメだと言われた人の「ならどこまで好き勝手やっていいんだ!」という怒りはもっともです。これについて調べたいです。

 

個人の感情はさておいて実際「どれくらい自由にべきの濃度を仮定していいのか」というのは当然の疑問です。

 

言い換えると「基数のべきに関してどれくらいの事実がZFCから証明できるか?」です。

 

で、正則基数のべきに対しては2つしか制約がないことをEastonが示しています。

 

(Easton)正則基数全体のクラスをReg、無限基数全体のクラスをICNとして{ F:Reg\to ICN}なるクラス関数が次の2条件を満足するとき,{\forall \kappa \in Reg (2^{\kappa}=F(\kappa))}はZFCと矛盾しない。

{\begin{cases}cf(F(\kappa)) \gt \kappa \\ \kappa \lt \lambda \to F(\kappa)\leq F(\lambda)\end{cases}}

 

1つ目の条件がK\"onigの定理です。 

 

この2つに反さなければ好き勝手設定していいわけですね。連続体濃度が三者三葉数番目のアレフになることは問題ないのでオッケーです。

 

ので、特異基数も好き勝手したい!というのが願望なのですがそうではないことが知られてて例えばSilverの定理があります。

 

(Silver)非可算共終数を持つ特異基数{\kappa}に対し{ \forall \alpha \lt \kappa (2^{\alpha}=\alpha^{+})}ならば{2^{\kappa}=\kappa^{+}}が成立する。

 

つまり非可算共終数を持つ特異基数は連続体仮説が破れない最初の基数にはなりえないのです。

 

Silverの定理は集合論の歴史の中では結構古い結果なのですが可算共終数を持つ特異基数について同じことが言えるか~というのは結構な時間未解決で解決は割と新しいです。といっても1980年代らしいけど。

 

さておいて、この結果を見る限り特異基数のべきの値は正則基数のべきの値に影響を受ける場合があるので正則基数よりは簡単にいかないぞーってなってしまいました。

 

この特異基数のべきについて何が言えるだろうか、というのが特異基数問題です。

 

そしてこの特異基数のべきを調べるにはどうしたらいいんだ...という話になるのですがそれは次回に書きます。

テスト

こんなブログ作った事を忘れてた。

 

tex使えるらしいから試してみる。

 

 { \aleph_{0} }

 

出来た。けどなんか不等号が打てない。<の何が悪いというのか...

 

(追記)

 { \aleph_{0} \lt 2^{\aleph_{0}} }

 

調べたら\ltにしたらできるよとのことだったのでやってみたらできた。やったー。

ブログを始めました

はじめまして。はかりといいます。


なんとなく開設したはいいが書くことがありません。


数学の勉強をしているので、そういうことが書けたらいいなぁという程度です。


あとは日々の備忘録、と言っても正直Twitterで足りてるんですけども。忘れない程度に更新します。


だ、誰が見るんだ・・・