読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

尊みで飯が食える

twitterアカウントは@mg_toHKRです。萌え4コマまんがと特異基数がテーマのブログです

基数演算の話 その1

おはようございます。

 

AWT48という概念が心臓を破壊していきましたが私は元気です。

 

もちろんこの記事は刀剣乱舞に関する話ではないです。

 

 さておき。

 

今自分は基数のべきについての話を書いているのですが、その1で

 

「無限基数の和と積は{\kappa+\lambda=\kappa\cdot\lambda=max\{\kappa,\lambda\}}でめっちゃ簡単!」

 

と書きました。

 

確かにべきの値が全く分からないことに比べれば簡単なのですが、演算の性質についてはそうでもないです。

 

ざっくり言うとこれは無限に関する計算を考えているので冒頭に挙げたようなことが普通に起こるのですが、それを確認するのはそんなに簡単でもないです。

 

なので和と積の定義をして諸々の性質を考えていきたいと思います。

 

注意なのですが、この話は全てZFC上の話です。

 

また、ここでは{\kappa,\lambda,\mu}や、これに添え字付けたものはすべて基数を表すことにします。

 

基数の定義とかは、

 

mgtohakari.hatenablog.com

 

に書いてあります。

 

定義

{\kappa+\lambda:=|\kappa\times\{ 0\}\cup\lambda\times\{ 1\}|}

{\kappa\cdot\lambda:=|\kappa\times\lambda|}

 

基数の和は直和の濃度、積は直積の濃度として定義されます。また、有限の場合を考えればちょうど拡張になっていることがわかります。

 

例)

{2+3=|2\times\{ 0\}\cup 3 \times\{1\}|=|\{\langle 0,0\rangle,\langle 1,0\rangle,\langle 0,1\rangle,\langle 1,1\rangle,\langle 2,1\rangle\}|=5}

 

無限項の演算についても、

{\sum_{i\in I}\kappa_{i}=|\bigcup_{i\in I}(\kappa_{i}\cup\{ i \})|}

{\prod_{i\in I}\kappa_{i}=|\prod_{i\in I}\kappa_{i}|}

として定義されます。{I}は添え字集合です。なんか定義が循環して見えるので注意を書くと右側の{\prod}は直積の意味です。記号の意味としては別物です。

 

和や積の演算について調べるには直積や直和の濃度を調べれば良いことがわかります。

 

これを考えるのに濃度の話を思い出します。

 

濃度の定義より、2つの集合の濃度が等しいとはそれらの間に全単射が存在することを言います。

 

2つの集合間に全単射が存在することを2つの集合は対等であると表現し、{A,B}が対等であることを{A\sim B}で書きます。

 

 選択公理があるので任意の集合{A,B}は整列可能です。

 

そして整列集合は順序数との間に全単射(順序同型写像)を持つので{A,B}は濃度を持ちます。

 

{|A|,|B|}は順序数なのでどちらか一方への順序構造の埋め込み写像が存在します。これは単射になるので{|A|\leq|B|}あるいは{|B|\leq|A|}ということになります。

 

で、両方言える時、すなわち{|B|\leq|A|}かつ{|A|\leq|B|}なるときBernsteinの定理より{|A|=|B|}が言えます。

 

また、{|B|\lt|A|}なるとき等号が言えないので全単射は存在しません。よって任意の単射{f:B\to A}全射でないです。もっと言うと全射が存在しません。

 

逆に、全射{f:B\to A}が存在しないなら{|B|\lt |A|}が言えます。

 

で、何が言いたかったかというと基数の演算はある集合の濃度で定義されていたので、基数の演算を調べるには「いい感じの写像を作る」というのが常套手段になります。

 

なので写像を使っていくつかの例を示していきます。

 

定理1

1){\kappa+\lambda=\lambda+\kappa}

2){\kappa+(\lambda+\mu)=(\kappa+\lambda)+\mu}

3){\kappa\cdot\lambda=\lambda\cdot\kappa}

4){\kappa\cdot(\lambda\cdot\mu)=(\kappa\cdot\lambda)\cdot\mu}

5){\kappa\cdot(\lambda+\mu)=\kappa\cdot\lambda+\kappa\cdot\mu}

6){\kappa+0=\kappa}

7){\kappa\cdot 1=\kappa}

が成立する。つまり基数の和と積はそれぞれ結合律と可換律、分配律を満足しそれぞれ単位元が存在する。

証明

 1) {f:\kappa\times\{0\}\cup\lambda\times\{1\}\to\lambda\times\{0\}\cup\kappa\times\{1\}}

{\langle\alpha,0\rangle\mapsto\langle\alpha,1\rangle}

{\langle\alpha,1\rangle\mapsto\langle\alpha,0\rangle}

として定義する。これは明らかに全単射だから{\kappa+\lambda=\lambda+\kappa}である。

2)~4)もほぼ同じ。5)は集合演算の分配律を考えればよいです。6)は{\emptyset\times\{1\}=\emptyset}であるから良い。7)も1元集合との直積は元の集合と明らかに対等なので良いです。□

 

また、次が言えます。

定理2

1){\kappa\leq\lambda}なら{\kappa\cdot\mu\leq\lambda\cdot\mu}

2){\kappa,\lambda\lt 0}なら{\kappa+\lambda\leq\kappa\cdot\lambda}

証明

1){f:\kappa\to\lambda}単射として{\mu}上の恒等写像との積で得られる写像は明らかに単射

2){\kappa=1}の時はあきらかなのでそうでないとする。

 

{f:\kappa\times\{0\}\cup\lambda\times\{1\}\to\kappa\times\lambda}{f(\alpha,0)=\langle 0,\alpha\rangle,f(\alpha,1)=\langle 1,\alpha\rangle}とすればこれまた明らかに単射である。□

 

わりと「それはそう」感が強いのでそれほど自明でない例を考えます:

 

定理3

任意の無限基数{\kappa}に対し{\kappa\cdot\kappa=\kappa}が成立する。

証明

次の主張から直接得られます:

 

主張

任意の無限順序数{\kappa}に対し{\kappa\times\kappa\sim\kappa}が成立する。

主張の証明

{\kappa=\omega}であるときは{\mathbb{N}\to\mathbb{N}\times\mathbb{N}}なる全単射が存在することは良く知られているので{\kappa\gt\omega}なケースを考えます。

 

{\kappa\times\kappa\sim\kappa}でない」無限順序数{\kappa}が存在したとします。

 

「」内の性質を(*)と置いておきます。

 

{\alpha}をそのような順序数で最小のものとする。

 

{\alpha\to\alpha\times\alpha}なる単射の存在は明らかで仮定より全単射が存在しないから{|\alpha|\lt|\alpha\times\alpha|}

 

このとき{\alpha}は基数となる。もしそうでないとすると{\beta\lt\alpha\land\beta\sim\alpha}なる順序数{\beta}が存在する。

 

{\alpha}は(*)を満足する最小の順序数であるから{\beta\times\beta\sim\beta}である。

 

しかし、{\alpha\times\alpha\sim\beta\times\beta\sim\beta\sim\alpha}であり矛盾。

 

よって、{\alpha}は基数である。

 

次に{\langle\gamma,\in\rangle\simeq\langle\alpha\times\alpha,\lt_{L}\rangle}なる順序数{\gamma}を考えます。ここに,{\lt_{L}}は2つの{\langle\alpha,\in\rangle}から出来る辞書式順序。

 

事実として認めてしまうのですが、この{\gamma}は一意に存在します。(ここでは話しませんが、順序数の演算というのも定義されていてこの{\gamma}が一意に存在することから順序数の積を定義したりします。)

 

また、この{\gamma}について、{|\alpha|\lt|\alpha\times\alpha|=|\gamma|}より{\alpha\lt\gamma}

 

これより、{\alpha}{\gamma}の始切片なので{\alpha\times\alpha}の始切片と同型になる。すなわち次を満足する{\langle\xi,\eta\rangle\in\alpha\times\alpha}が存在する:

 

{\langle\alpha,\in\rangle\simeq\langle\{\langle\xi',\eta'\rangle\mid\langle\xi',\eta'\rangle\lt_{L}\langle\xi,\eta\rangle\},\lt_{L}\rangle} ...(1)

 

ここで,{\delta=\xi\cup\eta +1}なる順序数を考えます。この{+1}は順序数の後続を取るという意味で基数の演算ではないです。

 

順序数は小さい方が大きい方の始切片となるから{\xi\cup\eta}{\xi\lt\alpha}あるいは{\eta\lt\alpha}となる。また{\alpha}は無限基数でありすなわち極限順序数。

 

極限順序数は後続を取る操作で閉じているから{\delta=\xi\cup\eta+1\lt\alpha}であり、かつ{\langle\{\langle\xi',\eta'\rangle\mid\langle\xi',\eta'\rangle\lt_{L}\langle\xi,\eta\rangle\}\subseteq\delta\times\delta}

 

(1)より、{\alpha\to\delta\times\delta}なる埋め込みが存在するが、{\alpha}の最小性より{\delta\times\delta\sim\delta}

 

これより、{f:\alpha\to\delta}なる単射が存在する。

 

また、{\delta\lt\alpha}より{g:\delta\to\alpha}なる単射も存在してBernsteinの定理より{\delta\sim\alpha}

 

しかし、{\alpha}は基数であるから自分より小さい順序数との全単射は存在しないはずだから矛盾。

 

これより、(*)を満足する無限順序数は存在しない□

 

よって主張が示せた。

 

これより、任意の無限基数{\kappa}に対し{\kappa\times\kappa\sim\kappa}だから{\kappa\cdot\kappa=\kappa}である。□

 

 系4

無限基数{\kappa,\lambda}に対し {\kappa+\lambda=\kappa\cdot\lambda=max\{\kappa,\lambda\}}

証明

{\kappa\leq\lambda}としても一般性を失わない。

 

定理2,3より{\lambda\leq\kappa+\lambda\leq\kappa\cdot\lambda\leq\lambda\cdot\lambda=\lambda}

 

よって{\kappa+\lambda=\kappa\cdot\lambda=\lambda=max\{\kappa,\lambda\}}が得られた。□

 

これらより、有限項の無限基数の和、積のみからなる演算は計算すると現れる項のなかで最大の無限基数になることがわかります。

 

べきはとても難しい(とても難しい)のでここでは考えなくて、とりあえず次回があれば無限項の演算を考えたいと思います。